本年、2/24(土)に開催した講座ですが、JCUEフォーラムにて再開催致しました。合志清隆医師(琉球大学医学部付属病院)、村田幸雄氏(国際潜水教育科学研究所)、野澤徹氏(水中科学研究所)を招き「減圧障害のファーストエイドと最新治療」をテーマに、解説をいただきました。

参考【開催報告】琉球大学医学部附属病院 公開講座 減圧障害のファーストエイドと最新治療 ~減圧障害(DCI)治療に異変??~ JCUE協力

【教育セミナー】
第1部 「減圧障害でのファーストエイドの最新治療」

村田 幸雄氏

国際潜水教育科学研究所
琉球大学医学部公衆衛生学講座 研究生
琉球大学医学部付属病院高気圧治療部

村田氏は、平圧酸素、大気下で酸素を使ったファーストエイドを中心に、主に沖縄での現状等を解説いただきました。3つのポイントを押さえ報告致します。

1.水辺事故の対応における救命・救護の現状を理解

まずは、事故の特徴を把握しなくてはならない。沖縄県は、年間50万人以上のダイビング客が来島する。また、水辺の事故発生件数は全国1位となっている。その内容は、ダイビングによる事故が多いが、最近は減圧障害とは異なる事故要因が増加している。スノーケリング中の事故や中高年者の生活習慣病なども懸念される。これら要因を検証したいが、個人情報の関係で現場にはフィードバックがされないのが現状だ。よって、事故防止の策を練りたいが結果・要因が不明な為、なかなか難しいと考える。

現在、一次救命・減圧障害の治療体制として、下記の点をあげる。

  • 水辺事故の一次救命措置
  • 初期の高濃度酸素供給の重要性
    ライフセイバーへのアプローチ
    学校教職員へのアプローチ

  • 医療機関
  • 専門医・技師不足
    高気圧酸素治療装置
    診療報酬(金額・回数)

  • 沖縄県の現状
  • 第2種装置:3基(琉球大学、南部徳洲会病院、他)
    第1種装置:7基(沖縄本島5基、宮古島1基、石垣島1基)
    今後、初期段階での高濃度酸素をいかに提供できるかがとても重要。
    症例を交え、事例からの考察では、酸素療法の有効性が開設された。『DCIでも、神経症状を伴っており軽症例ではないが、時間が経過しても酸素吸入のみで症状が顕著に改善』

2.現状が抱える問題点を明確にする

沖縄県が抱える問題点は、下記の通りである。
現状 問題点

治療施設の不足:年間50万人以上のダイビング来沖者、離島でのダイビング活動が多数

各離島の医療機関で、酸素の備蓄量が問題

現場での酸素供給能力:初期対応力の不足(施設・人材)

酸素トレーニングを受けた人材の不足、教育・訓練の強化

現場と直近の医療関係との連携:今日の治療指針2018年版 減圧障害

「今日の治療指針2018版」では、減圧障害に対し斬新的な情報に変化してきた。厚生労働省より、非医療者による、『救命や救護に応急処置として医療酸素は使用可能』との見解が示され、初期対応の重要性から、現場で早急な酸素吸入を指示する。これ病状が改善することが多いと治療方針に明記されている。医療機関との連携の強化。

医療施設への搬送能力

ダイビング事故対応の地域性を見てみると、沖縄県は離島が点在するために、航空機搬送が選択肢としてあげられる。減圧障害での航空搬送では、容態が悪化する症例が報告されている。

医療用酸素の設備量の限界

沖縄本島だけしか、医療用酸素が詰められないため、離島においては診療所レベルでかなり備蓄が乏しい。離島診療所での酸素備蓄量の問題を補うために、酸素濃縮器の普及をさせたい。

作業環境での問題点:インストラクターの高齢化、業務範囲の拡大による過重労働

減圧障害に罹患する機関が増加(Vann. 2011)、長期のスクーバ潜水が精神神経機能に影響(Kowalski. 2011)、何らかの精神身体機能の障害を引き起こす可能性が懸念される。

3.救命・救護の体制、連携の強化と、継続的な訓練の必要性を再確認

 救命・救護において重要なことは、地域に即したガイドラインの作成、ネットワーク、継続的な訓練であること。
「もしもの時の搬送体制」では、緊急通報時のシミュレーションは出来ているのか、現場から医療機関までの搬送ルート、自力搬送時の酸素供給と水分補給量の確認等確認する必要がある。
沖縄では、潜水事業者と救急・医療機関の『橋渡し』をする為のネットワークを組織し、的確な事故対応と重症化を防ぐ役目を担う動きが組織化しつつある。
 訓練については、発生要因及び事故状況の多様性を鑑みて、様々なシナリオを設定して訓練する必要がある。マニュアル通りに行動できるとは限らないので、継続的に訓練することにより実践力がつくと確信している。

第2部 ダイビングと酸素供給法  
「ウォータースポーツのための酸素ファーストエイド」

野澤 徹氏

水中科学研究所
社会スポーツセンター

 野澤氏は、ダイビングやレスキュー向けに、基本的な応急手当を習得している人向けの酸素プログラム概要のポイントを絞ってお話頂きました。応急手当は、事故の一次対応であり、その後正式な医療を受診する前に行われる、緊急的な対応です。その後、必ず医師の診断が必要です。

1.溺れの応急手当と酸素

「溺れとは何か」乾性溺水、湿性溺水など様々な定義があるが、基本的には水に顔が完全に沈んで呼吸できなくなるか、水を吸って呼吸が妨げられる状態を言います。低体温にも注意が必要となります。水を吸い込むと、血中酸素の不足→除脈が生じる→心停止が起こります。心臓が動いているうちに引き上げ、人工呼吸による吸込みで自発的循環回復の可能性が非常に高いのです。これは、酸素供給が重要になる根拠です。

溺水での救命の順番は、予防→発見→浮体→揚収→手当というパターンが、溺水での救命の連鎖となります。人工呼吸は、「水面で行う・曳行しながらする」には、よほどトレーニングを受けていないと困難である。救助要請が可能な場合は、その場で人工呼吸をしながら待つのがよい場合もあるので、判断が必要である。また救助で水に入る場合は一名より複数の方が望ましい。できるだけ迅速に引き上げ、固い表面で一次救命処置をするのが良い。
 溺水のプロトコルは、反応・呼吸なし→助け・救急車を呼ぶ→気道の確保→吹き込み→反応確認→心肺蘇生法の開始→AED装着・操作となります。吹き込みやAED使用時に、補助的に酸素を使う酸素ファーストエイドは有効です。
水辺のスポーツ活動に安全を期し、予防措置を講じるためには、これら知識と技術は救命のカギとなります。

2.ダイビング障害と酸素

 ダイビング障害は、呼吸ガスが体内に溶け込み、減圧症と動脈ガス塞栓を合わせて減圧障害という。減圧障害に対してファーストエイドで高濃度酸素を供給することは、不活性ガスの排出促進、体内の気泡の縮小、虚血部分への酸素供給等の効果があります。高濃度酸素の位置付けは「あくまでもファーストエイドで、症状が消えたからと自己判断せずに、専門医の診断を仰ぐこと」です。
 もう一つ、酸素を取り扱う場合、その危険性を考慮しなければならない。高酸素濃度状態では火災や爆発のおそれがあるので、十分に注意しなければならない。人体については、酸素中毒の危険性を考えなければならないのと、医療禁忌があることを理解しておかなければならない。除草剤を吸い込んだ場合に起こるパラコート症候群、慢性閉塞性肺疾患、過換気症候群などがあげられる。過換気症候群などは、水面でパニックを起こした場合等にもみられるので、水の事故だからと安易に考えない方が良い。状況を判断し、溺水かどうか見極めなくてはならない。

3.追加情報

 1次救命で、酸素を使う有効性をあげたが、医療用の酸素は日本薬局法の定める処方薬であるため、一般が使用することはできない。しかし、減圧障害や溺水事故でのファーストエイドで、純酸素を使った応急処置は有効であることが認められている。
 平成28年5月27日付で厚生労働省医政局(受領027第3号)、医療用酸素救護について「ダイビングやプール等の事故での医療用酸素の使用に係るQ&A」の文書が公表された。「人命救護での応急手当での医療用酸素の使用」の解釈がより明確になった。
 ダイビング事業者・プール営業者等は、人命救護の為に緊急時は、医療酸素(器材含む)を使用できるが、酸素についての『必要十分な知識と経験』が求められる。酸素器材を十分に使いこなせるだけの練習を定期的に行い、自分のトレーニングの範囲で十分な注意をし、酸素を
補助に使ったファーストエイドを実施する必要がある。

付記「Q&A」詳細:(公財)日本レジャーダイビング協会 http://www.diving.or.jp/medical.html

報告:山内 まゆ

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