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【開催報告:JCUEフォーラム2019 第2部】
『海に流され続けるプラスチックの現状と問題』
環境省 水・大気環境局 水環境課 海洋環境室 室長 中里 靖氏

フォーラム第2部は、環境省・海洋環境室 室長中里氏に海洋ごみの現状と問題点を解説頂きました。
私達の暮らしには、多くのプラスチック製品が溢れています。
これらプラスチックが環境に与えている影響とは何なのか、現状や国としての取組はどうなっているのか等、幅広い内容をお話頂きました。

海洋ごみについて

日本の海は、冬場を中心に非常に多くのゴミが漂着します。
その要因として、海流の風の影響が大きいと考えます。
黒潮や対馬暖流が流れ込み、夏場は南東や南西方向からの風、冬場は北東、北西の風が強いのが日本周辺の環境の特徴があるからです。
海洋ゴミであるレジ袋や包装類は海面下にある為に海流により流れ、発泡スチロールやペットボトル等は風の影響を受け漂着物が流れ着きます。

海洋ごみは、世界的な問題となっております。
Jambeckがサイエンスに投稿したデータによると、陸上から海洋に流失したプラスチックごみの発生量(2010年推計)を人口密度や経済状況等から国別に推計した結果、1~4位が東南アジアであった。
インドのニューデリーでは、川がゴミ捨て場となりほぼすべてがプラスチックごみで覆われています。
インドネシアでも同じような光景が見受けられるが、国がこの状況を問題視し、ごみを排除していく動きに積極的に関わる等、意識が高まっている。

地球規模での汚染

プラスチックごみによる汚染は、地球規模で広がっている。
北極や南極でもプラスチックが観測されたとの報告もある。
ダボス会議(2016年1月)では、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの量が魚の量を超過(重量ベース)するとの試算が報告された。
2014年に出された現状であるが、毎年3億1千トンのプラスチックが作られている。
海洋プラスチックごみ量は、1億5千万トンであり、重量ベースで魚の量の1/5と推定。
また毎年約800万トンの流入と推計。
プラスチックと魚の量は、1:5ですが、このままプラスチックが増え続け、一定量海に流れ続ければ、2050年にはプラスチックが魚の量を超越すると報告されている。

「懸念される影響」想定される被害

プラスチックは何がいけないのか懸念される影響として、生態系を含めた海洋環境への影響、船舶航行への障害、観光・漁業への影響、沿岸域居住環境への影響です。
近年、海洋中のマイクロプラスチックが生態系に及ぼす影響なども多く報告されている。
海中を漂っているレジ袋をクラゲと間違え、ウミガメやクジラが誤食するなど報告されている。
その他、水中に放出・廃棄・投棄された漁具が水生生物に危害を与える現象で、ゴーストフィッシングも問題となっています。

マイクロプラスチック

マイクロプラスチックの問題では、性能を高めるために安全ではない添加剤を加えている事と、周辺海水中から残留性有機汚染物質(POPs)を吸着する性質がある。
これら有害物質が、食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されています。
環境省の助成を受け、九州大学等の共同研究チームが、海洋における将来のマイクロプラスチック浮遊量の予測を、過去から現在までの観測結果をもとにコンピュータ・シミュレーションで再現し、50年先までの太平洋全域の海洋上層における浮遊量を予測した。
その結果、プラスチック海洋流出傾向が続いた場合、日本周辺や北太平洋中央部では、2030年までに現在の約2倍、2060年までには約4倍となることが示された。

マイクロプラスチックは、人間の生活エリア・産業活動エリアの川から流れてくると言われています。
紫外線や波などの影響を受け破砕され海へと流れ、有毒物質などを吸着されたものを海洋生物が誤食し、食物連鎖の頂点である人にまた戻ってくる。
東京湾などでカタクチイワシを調査すると、7~8割の内臓からマイクロプラスチックが見つかったという報告があります。
この様な状況を受け、海洋プラスチック問題に関する解決に向けた様々な国際動向があります。
持続可能な開発目標(SDGs)では、ターゲットの1つとして「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」が掲げられている。
国連環境総会(UNEA3)でも、「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチック」に関する決議が採択され、専門家グループの会合を招集し検討される。その他、G7やG20、日中韓三か国環境大臣会合などの動きもある。

我が国のゴミ処理

日本のゴミ事情を見てゆくと、ごみの総排出量は個人の努力等により減っています。
ペットボトルについては、ほぼ全ての市町村で分別回収・再商品化が実施されています。
廃棄物等の発生抑制と適正な循環的利用・処分により、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷が出来る限り低減される循環型社会を目指しています。
リデュース(Reduce)=出すごみの総量を減らすこと、リユース(Reuse)=再利用すること、リサイクル(Recycle)=再生産に回すことで、「3R」と海外でも展開をしておりますが、なかなかリサイクルに向かないものもあります。

海洋ごみ問題への取組

海洋プラスチック問題に関する国内動向及び取組として、海岸漂着物処理推進法改正、第4次循環型社会形成推進基本計画、海岸漂着物等地域対策推進事業などがあげられる。

海岸漂着物処理推進法基本方針改定(案)の概要は、1.海岸漂着物等の円滑な処理、2.海岸漂着物等の効果的な発生抑制、3.多様な主体との連携の確保及び普及啓発、4.国際連携の確保及び国際協力の推進などの改定案をとりまとめました。

海岸に漂着したごみを各都道府県や市町村が、地域計画に基づき実施する海洋ごみの回収.処理、発生抑制対策に対し、年間約30億円の予算を取り補助金による支援を実施する海岸漂着物等地域対策推進事業なども行っている。
プラスチックをいかに有効に使っていくかが重要ですが、そもそも化石資源を利用している故、それらを減らすことはCO2削減、地球温暖化など地球環境にとっても有効です。
プラスチック資源循環戦略(案)の概要では、マイルストーンを掲げ達成を目指している。
海洋ごみは、不明な点が多く更に調査が必要であるため、環境省では各種調査を行っているが、なかなか全体をつかむのが難しい。

「プラスチック・スマート」キャンペーン

環境省では、世界的な海洋プラスチック問題の解決に向けて、個人・自治体・NGO・企業・研究機関など幅広い主体が連携協働して取組を進めることを後押しするため、「プラスチック・スマート -for Sustainable Ocean-」と銘打ったキャンペーンを立ち上げました。

「ポイ捨て撲滅」を徹底した上で、「代替素材の開発・活用」、「不必要なワンウェイのプラスチックの排出抑制」や「分別回収の徹底」などプラスチックとの賢い付き合い方を全国的に推進し、我が国の取組を国内外に発信して行くのが目的です。環境省のHPにて、取組事業例を募集しておりますので、参加頂ければと思います。
更に、このキャンペーンを強化することを目的とし、「プラスチック・スマート」フォーラムも開催しております。

終わりに

  • 世界全体では、途上国も含めゴミ処理の適正化を進める必要があり、国際協力の推進が重要。
  • 海洋ゴミは、外国から流れてくるものもあるが、国内で発生したものも多い。
  • 日本では、住民の協力により分別回収が広く実施。ゴミ削減の努力が続けられ、ゴミの量は減っている。
  • しかし、今でも海岸に多くのゴミが漂着
  • ゴミは大雨などで、河川を通じて海洋に流失することが多い。海洋ゴミを減らすためには、海岸や河川の他、街中も含めごみのぽい捨てをしない、きちんと処理をすることが重要。
  • 一人一人の普段からの心がけが重要。

まとめ

世界中で年間800万トンの海洋ごみが発生しており、このままだと30年後にはごみの量が魚を上回るかもしれないと言われている現在。
私たちダイバーは、海面や海底、打ち上げられた漂着ゴミなどを目にしますが、その実態を知らずに見過ごされている事もあるのではないでしょうか。
今回、海洋ごみの現状と問題点を国内外から見つめ、その原因や問題解決に向けての取り組みをお話いただきましたが、多くの学びを得る時間でした。
「一人ひとりの行動とReduce(発生抑制)」が、今後の大きなポイントです。地球環境を守るためにも、知る事から始めるのも大切です。まずは、「プラスチック・スマート」キャンペーン
http://plastics-smart.env.go.jp/
を覗いてみるのは如何でしょうか?

報告:山内 まゆ

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