2025年1月29日に開催されたJCUEセミナーは、東伊豆・富戸をメインフィールドとして潜る「城ケ崎インディーズ」店長の矢北拓也さんが登壇し、カメラを選ぶ際のポイントをじっくり分析・解説しました。セミナー開始直後に取ったアンケートでは、参加者の多くはすでに何かしらのカメラを持っている人が多かったのですが、持っていないほうのカメラの導入検討やすでに持っているけれどもより使いこなすためのコツ、知り合いやゲストへのアドバイスに繋がるヒントなど、盛りだくさんの内容となりました。前半は矢北さんによるセミナー、後半はJCUEの山中会長を交えての質疑応答の2部構成で展開されました。
カメラの特性・選ぶ要素について
今回のセミナーは、どちらのカメラがいいかの優劣をつけるのではく、“比較”です。どちらのほうがご自身のスタイルや撮りたいものにマッチするのかの参考にしてください。カメラを持つことで、フィッシュ・ウォッチングの楽しみ方が増したり深まったり、必要になるダイビングスキルを知ることができたり、記録した写真や動画はSNSなどで自分なりに水中世界を表現し、発信することができます。大まかに分けると、ワイドならGoPro、マクロならTGということができると思います。それぞれの長短所と作例は次のとおりです。
ただ、どちらもアクセサリー(ワイドレンズやマクロレンズ)による進化で、GoProでもマクロの絵、TGでもワイドの絵がじゅうぶん撮れるようにもなっています。そこでどちらにするかの重要な要素の1つである予算(いずれも税込み)も見てみます。
- TG-7 本体定価69,300円、ハウジング定価44,000円で合計113,300円。
- HERO13 Black本体定価68,800円、ハウジング8,000円で合計76,800円。
本体価格にはそれほど差がないのですが、ハウジングで大きな差が出ます。価格の面で見ると、TGシリーズのほうがどうしても高くなります。
最終的な決め手は、ご自身がどんな表現、どんな発信をしたいか、どんな作品に自身が惹かれるかによります。海で出会った生きものや景色、自然などをメインに発信したいならTGがいいでしょうし、「こんなところを潜った」「仲間とこんな時間を過ごした」というような、人物入りの楽しい雰囲気を撮るならGoProになると思います。他の検討材料としては、動画か静止画か、撮影とダイビングのバランス(装備のコンパクトさ)、潜るポイントやショップなどがあるでしょう。
質問に答えながらのクロストーク
セミナー後半は、チャット機能で参加者から寄せられた質問をもとに、JCUEの山中会長も加わってのクロストークを行いました。主にGoProの使いこなしに関する質問があがり、より実用的・実践的なアドバイスへと繋がりました。
(矢北さん)私は1本の動画を作るのに、3つくらいのアプリを経由しています。音楽はコレ、トランジションはコレ、文字はコレと言った感じです。GoProの編集アプリもいいですが、もし1つ挙げるなら、有料になってしまいますがInShotを勧めることが多いです。直感的に編集しやすくて、これがあれば完結できると思います。ゲストにその日のダイビングの思い出として共有するために編集するとしたら、スマホで7~8分くらいですぐに編集できます。
(矢北さん)長ければ良いというわけではありません。長いほど折れやすく、強度の問題があります。私自身、一脚を改造して6mの長さの自撮り棒を作ったこともありますが、重さですぐに折れました。オススメは70㎝くらいで、片手を伸ばしたときに倍になるくらいが使いやすいと思います。金属部品が極力使われておらず、小さく折りたためるのも重要ポイントです。ただ、「自撮り棒を使って伸ばせる距離というのは、自身のダイビングの技術で詰められる」と言うガイドさんもいて、なるほどなぁ~と思うことも。また、最近は自撮り棒リテラシーと言いますか、マナーを弁えてという声も聞きます。
(矢北さん)アクションカメラは画角が広いので、必然的に広角のライトになるのですが、選ぶ際のチェックポイントは、ライトの光源の外周の縁が徐々に暗くなっていくタイプです。ライトが照らしているところが丸くはっきりと出るよりは、外周がじわ~と暗くなるものがいいですね。でもそうしたものは高価格帯の商品が多いです。
(山中さん)私が普段いる黄金崎では、学生ダイバーも多いのですが、金銭面でキツキツな子も多いです。カメラの購入だけでいっぱいいっぱいという子も多いのですが、安価な中華製のライトというのはどうなんでしょう?
(矢北さん)中華製は当たり外れがあると言われていますね。日本製のOリングキットを使うだけでも水没率は下がると聞きますが、ダイビング機材メーカーのライトを推したいところです。
(矢北さん)GoPro一強時代は終わりを迎えようとしています。この1年くらいで、インスタ360やDJIのオズモアクションProなどを使う方が増えています。オズモはバッテリーの持ちもよく、起動速度もとても速いのに、GoProよりも1万円ほど安いです。これまでのGoProはずっと使っていると熱を持って止まるのは“しょうがない”と捉えられていましたが、オズモではその現象は極端に減っています。他社の機能面がどんどんアップしているという印象です。
(矢北さん)確実にあります。私も撮ってもらうのが好きなので、なるべくかっこいいポーズの時間を長くするように心掛けています。フィンを蹴り切って足が揃っている、膝が伸びている、フィンが真横だと線になってしまうので、面も見せるようにするなど。またレギュの咥え方、マスクを着ける位置などでも表情もだいぶ変わります。私が18歳の頃、ゲストから「水中は不細工だね」と言われて、改めて陸でタンク背負って自分のダイビング姿を見たら確かにそうだったんです。そこからどうしたら少しでもスマートに見えるかにも意識を向けるようになりました。キレイに、かっこよく撮られることを意識したスキルの上達というのは確実にあります。そのためにもゲストが潜る姿を動画に撮って見せてあげることもあります。動画はインストラクションともマッチしていると言えるでしょう。
(山中さん)とくに体験ダイビングのかたなどは、潜っているところを撮ってあげるととても喜ばれますよね。
(矢北さん)じつは誰にでも、「ダイビング中の自分を撮られたい」という気持ちが少なからずあると思います。コンパクトなアクションカムだと「カメラを向けられている」というプレッシャーも少ないのもメリットだと思います。
まとめ
動画は撮影しただけで、データがPCに溜まるいっぽう……という声もありますが、矢北さんによれば、「テンプレートなどを使えば1本の動画を作るのに5つのステップを踏むだけ。慣れてしまえば、写真の色味調整やゴミ消しなどの加工よりも簡単なくらい」とも言います。今後JCUEセミナーで、動画編集の実践編、カメラアクセサリーの展開、各SNSの現状と活用など、今回のセミナーから派生する様々なテーマでの開催があるかもしれません。どうぞお楽しみに!
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