【第五(最終)回 Deco for Divers(ダイバーのための減圧理論)勉強会】

毎回、事前勉強をした後に集まった方々で疑問点を洗い出し、読み進めてきた勉強会も、いよいよ最終回となりました。
本日は、混合ガスと、その他の減圧モデルについてです。

混合ガス

テクニカルダイバーがレクリエーションダイビングの考え方を、そのままテクニカルの減圧ダイビングに当てはめると、大きなリスクが生じる可能性があります。
レクリエーションダイビングの中では正しいとされる減圧は、その領域外ではかならずしも妥当ではないのです。
より深いダイビングでは、酸素、ヘリウム、窒素の混合ガス、トライミックスの使用が増えてきています。
呼吸ガスへのヘリウムの使用は深いダイビングには大きな利点があると同時に減圧に新たな問題点を生むことになります。
7章ではトライミックスの減圧に関するすべての要因を取り上げました。

その他の減圧モデル

多様な減圧モデル、減圧アプローチについて取り上げられています。
ジョン・スコット・ホルデーンのオリジナルの研究のスポンサーの英国海軍は、減圧スケジュールを他の手法で計算する減圧テーブルを開発します。
英国海軍生理学研究所(RNPL)によって開発されたこの減圧表は、RNPLテーブルとして知られています。
この減圧テーブルではホルデーンの伝統的なアプローチとは、まったく違ったモデル化のアプローチが採用されています。
ブリティッシュ・サブアクア・クラブ(BSAC)はこのRNPLモデルをもとにさらに複数のテーブルを開発します。
BSACはこのモデルの詳細を公表していませんが、このテーブルを開発した科学者の研究を調べて、その断片をつき合わせれば、どのような仕組みか知ることができます。
アメリカ海軍も人体の窒素の吸収と排出の仕方について、違った仮説のもとに他のモデルを開発します。

こぼれ話

通常のレジャーで潜る場合は、混合ガスなど使うことはないのですが、今回取り上げられたMixed Gasを使っているテクニカルダイビングをする方々のお話は、『え~、ほぉ~、そうなんですか?!!』などと、参加者の皆さんの声がこぼれました。
ガスの選択や分圧の難しさやガスの特性など…興味深い経験談を伺いました。
ドライスーツに吸気をする場合、ヘリウムは『×』入れた瞬間に冷たく熱が奪われるそうです。
通常の空気を入れるもしくは、アルゴンを入れるそうです。
アルゴンは、空気より密度が大きく保温性が高いとのこと。
それぞれのガスの熱伝導性を考えないといけないのですね。
もう一つ驚いたのは、-100m潜るのに必要なガス代は、約3万円(その他諸経費を含めると7~8万)かかるそうです!
ガスにも、高価なものがあるので仕方がないのでしょうが…。
テクニカルの世界は、ダイビングに伴う危険を管理し、多くのトレーニングと器材を使いこなさなくてはなりません。
レクリエーションダイビングとは違う魅力の詰まった世界が広がっているのでしょうね。

最後に・・・

「Deco for Divers」を読み進めていく事により、新たなる知識を得ることが出来ました。
とても興味深く、面白かったとともに、しっかりと知識を持つ大切さを感じました。
勉強会の発起人の唐澤さんが『日本のダイビングインストラクターは、この本を読んで勉強し、最低限の知識を持つべき』とおっしゃった意味も理解いたしました。
もちろん、理論だけ知っていても何も役には立ちませんが、理解をするとしないとでは雲泥の差。
Deco for Diversの著者 MARK POWELL氏も、
“There is a false sense of security amongst recreational divers that decompression is a well understood science and that decompression illness can easily be avoided if you stick to your decompression tables.”
(リクリエーションダイバーの中には、減圧は理解の進んだ科学であり、減圧テーブルを守ってさえいれば、減圧症は容易に防げるという、安全への誤解がある)
“Blindly following a set of tables, PC planning program or any other form of decompression planning without understanding some of the principles of decompression theory can be highly dangerous.”
(減圧理論の原理を理解せずにダイブテーブル、パソコン・プランニング・プログラム、その他いかなる形の減圧プランニングを盲信することは、非常に危険である)と冒頭で述べられています。

全5回となりました勉強会も最終回、少々…寂しいような、もう少し続けたいような複雑な思いを抱きつつ、また新たなる勉強会をしたいな~とも考えております。今回、参加された皆様もきっと同じ思いだと感じます(笑)
翻訳をして下さった唐澤さん、ご意見番として色々とご教授を頂いた野澤さん、翻訳した原稿の大量なる印刷と進行をして下さったJCUE会長・山中さん、そして多くの参加者の皆様と充実した時間を共有できたことに深謝いたします。皆様、本当に有難うございました。
またお会いできる日を楽しみにしております。

【本日の内容】

Chapter 7: Mixed Gas
Chapter 8: Other Decompression Models

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