2019/7/4(木)に開催されたJCUEセミナーは、「海をつくる会」事務局長を務められている坂本昭夫さんをお招きしました。
1981年から38年にわたり水中清掃活動をし続け、実際に海ゴミの変化を見つめてきました。問題になっているマイクロプラスチックと、海ごみの今を語って頂きました。
目次
1.広がり続けるマイクロプラスチック
4年くらい前に見つけた動画です。人がポイ捨てした空のペットボトルが転がり、排水溝から下水道へ、そして海へと流れ着く。海では紫外線を浴びて、ペットボトルが劣化し、粉々になり海中をさ迷う。その小さくなったマイクロプラスチックを魚が餌と間違えて食してしまう。その魚を人間が捕獲し、食卓へ並べられる。その魚を食べた人が、ポイ捨てをした人であったという内容です。4年前には、なるほど…と思っておりましたが、この動画が今、現実味を帯びてきました。
【魚介類】
2016年4月 東京農工大の高田教授のチームが発表したデータでは、国内初、東京湾のカタクチイワシからマイクロプラスチックが発見されました。カタクチイワシ64匹の消化管を調べた結果、49匹から計150個のマイクロプラスチックを検出し、0.1~1ミリの大きさのものが8割を占めました。その他、海外のデータは、次の通りです。
- 太平洋ゴミベルトで有名な北大西洋環流では、調べた魚の10~35%の消化管の中から、プラスチック片が見つかっています。(Boerger et al. 2010, Davison & Asch 2011)
- ヨーロッパでは、英仏海峡に生息するニシン、マイワシ、カタクチイワシ、アジ、ホワイティング(タラ科、白身魚フライ)、マトウダイ、ホウボウ、カレイの仲間など、重要な食用魚からプラスチック片が出てきました。(Lusher et al.2013, Collard et al. 2015, Collard et al. 2017)
- ポルトガルの沿岸でも、26種の食用魚のうち17種類からプラスチック片が消化管内でみつかっています。(Neves et al. 2015)
内臓(ワタ)ごと食べる魚サンマ、イワシ、ししゃも、アンキモ、カワハギ、鮎、塩辛、身うるか・肝うるか、チャンジャやマグロの腸とかも売っています。腸ですと完全に、中にマイクロプラが入っている。入っていないものは無い。そうすると人間は摂取していることになります。
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ヨーロッパで獲れたムール貝の9割
二枚貝の多くは濾過食性です。濾過食性とは、海水を吸込み海水に含まれるプランクトンを濾過して食べるタイプです。日本人が、アサリや牡蠣を食べるのと同じで、ベルギー人は、ムール貝を良く食べます。ベルギー人1人当たり、年間に平均122匹のムール貝を食べるとして、1つの貝に平均90個のマイクロプラが見つかっているので、推測すると一人当たり年間に11,000個のマイクロプラを食べていることになります。私は、アサリの調査も行うので月間50個くらいのアサリを食べています。そうすると、私の体の中には…一体どれくらいのマイクロプラが蓄積されているのだろう?と思います。
アサリや牡蠣などの貝を食べる時、たいていは消化管も一緒に食べます。二枚貝や牡蠣・ホヤを食べるとプラスチックも食べることになります。 これは、2018年のデータです。「マイクロプラスチックが人の排泄物から発見」世界各国の被験者8名の排泄物を分析したところ、全員のサンプルから最大9種類のマイクロプラが発見されました。人間は様々なものを摂取していますから、完全に体内から出てきていますよということです。この様なデータを見ていると、段々と人間が嫌になってきます。
【飲料】
次は、ペットボトルの水についてです。2018年8月ニューヨーク州立大学フィリードニア校の研究チームが、主要な11の国際ブランドのペットボトル入り飲料水259本の93%に、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタート(PET)などのプラスチックが混入している事を発見した。混入したプラスチック粒子の数は、ボトル1本につきゼロから1万個超まで、ばらつきが大きかった。世界平均では、1リットル当たり325個。その95%が6.5~100μmだが、もっと大きいものもある。(70μmは髪の毛の太さ) WHO(世界保健機関)は、飲料水の90%からマイクロプラスチックを検出した研究を受け、同年プラスチックが人間の健康に及ぼす影響についての調査を開始しましたが、動き出しが遅いのですよね。データとしては直ぐに発表されないので、4~5年後に出てくるのではと考えています。地理的多様性を確保する為、検査用のサンプルはアメリカ、ブラジル、中国、インドネシア、インド、ケニア、レバノン、メキシコ、タイの5大陸・9か国から集めました。
プラスチック粒子の正確な発生源は不明だが、研究結果を見る限り、少なくとも製造工程にも原因がある。「100μmを越える粒子の50%以上がポリプロピレン。ほとんどのボトルのふたの原料として使われているもの」製造過程に何らかの問題を孕んでいるのだと指摘されているが、原因は不明なままである。マイクロプラが入っているというデータだけが前に出て、その原因等については詳細の調査がされていないのが現状です。
- ドイツビール
NDR(北ドイツ放送)の消費者情報番組「マルクト」の中で、ドイツで売られているビール銘柄を抜き打ち検査したところ、全てのボトルに微小なプラスチック粒子の混入が認められたと報告された(2014.9)。
1位は、ノースウエスタン・ジェヴァー・ブルワリー社のピルスナー、1リットル当たり平均78.8個の破片が検出された。続いて、パウラーナー者の看板ビールであるヴァイスビールからは70個、ヴァルシュタイナー社のヴァルシュタイナーピルスナーでは47個という結果。
こうなると、炭酸水にも含まれているので、焼酎や日本酒も調べてみたいが、日本ではそのようなデータがないのです。 - 水道水
米ミネソタ大などの研究グループが2018年9月に、水道水の検出率は81%と高く、ほとんどは繊維状で繊維製品由来とみられる。日本の水道水は調査されていない。
採取した水のサンプル500mlあたりのプラスチック粒子の数の平均を取ると、最も多いのは米国のサンプルで平均4.8個。ワシントンD.C.のサンプルには16個もの粒子が含まれていた。米国の水道水を毎日2ℓずつ呑み続けると、1年で摂取するマイクロプラ粒子は7,000個を超えることになる。
【塩】
当然、海水や水にも入っていますから、生成した塩に入っていないわけがありません。食塩の9割にマイクロプラが検出されている。39銘柄中、プラスチック片ゼロはわずか3銘柄。岩塩からも検出されている。
韓国・仁川大学のキム・スンキュ教授とGreenpeace East Asiaの共同研究グループが、オーストラリア、ベラルーシ、ブラジル、ブルガリア、中国、クロアチア、フランス、ドイツ、ルーマニア、インド、インドネシア、イタリア、韓国、パキスタン、フィリピン、セネガル、台湾、タイ、英国、米国、ベトナムの国で販売されている39製品のうち、海塩は28、岩塩は9、湖塩は2を検査。含有量の多かった上位10銘柄のうち、9銘柄がアジア産。検出されなかったのは、台湾の海水由来の食塩(詳細不明?)、中国の岩塩由来の食塩、フランスの天日干しによる精製なしの海水由来の塩のたった3種類だった。
これは、成人1人当たり年間2,000個のマイクロプラスチック片を食べているのに相当するという。最も多くのマイクロプラが検出されたのは、インドネシアだった。そして、中国、フィリピンなどアジアでのマイクロプラ検出量は、北米やヨーロッパなどの他地域に比べて突出して多く、アジアがマイクロプラの「ホットスポット」になっている。
【大気】
プラスチックによる汚染とは無縁と考えられている辺境の山岳地帯が、実際には大気中に浮遊するプラスチック微粒子で覆われていると指摘する研究論文が2019年4月発表されました。大気中濃度は、仏パリなどの大都市に匹敵するほど。(英科学誌Nature Geoscience)
仏蘭西とスペインにまたがるピレネー山脈の無人の高高度地域では、毎日1平方メートル当たり平均365個のプラスチック粒子が地上に降下したと言います。大半が直径10~150μmのプラスチックの断片、繊維、シート状の薄い膜など含む。マイクロプラは、大気汚染物質である。よって、大都市だろうが山間部であろうが、地球上どこにいても呼吸をしていれば、マイクロプラが体内に入るということになります。
2.身近な素材、合成繊維
マイクロプラを調べていると、合成繊維につきあたります。
合成繊維は、ファイバー状(繊維状)のプラスチックです。合成繊維の布地から発生するマイクロプラは、マイクロプラスチックガイバー、あるいは単にマイクロファイバーと呼ばれます。
イギリスとオーストラリアの研究チームは、ポリエステル製の毛布、フリース、シャツを選択したところ、フリースが最もマイクロプラスチックファイバーを放出し、1回の洗濯で1点の衣類から最大1,900本以上のファイバーが放出されたと報告しています。マイクロプラスチックファイバーは極めて小さいため、かなりの割合が下水処理施設をすり抜けて、最終的に川や海に流れ込んでいます。(Browne et al, 2011)
イギリスチームは、アクリルが最もファイバーを放出し、1回の洗濯で73万本の科学繊維を放出。これは綿とポリエステル混合の約5倍、ポリエステルの約1.5倍に相当すると発表。(Napper & Thompson 2016)
ウールに近い風合いを持つアクリルは、セーターなどに良く使われる素材です。カットソー、肌着、靴下などの衣類から、ぬいぐるみ、毛布、カーペットなど幅広く使われています。海外のニュースでは、次のような発表もありました。
●人が飲食や呼吸を通じて体内に取り組むマイクロプラ微粒子の量は、最大で年間12万1000個に上るとする研究結果が5日、発表された。カナダの研究チームはマイクロプラ汚染に関するデータを分析し、米国人の一般的な食生活や消費習慣と比較。成人男性の場合、1年間に1人当たり最大5万2000個のマイクロプラを体内に取り込んでいる試算。
呼吸の際に空気中に漂うマイクロプラを吸い込んでいる点を考慮すると、体内に取り込まれる量は年間12万1000個に上り、1日当たり320個を超える事も分かった。ボトル入り飲料水のみを飲んでいる人は、年間で9万個多く、マイクロプラスチックを取り込んでいる恐れがある。直径13μm未満のマイクロプラスチックは、「ヒト組織の内部に入り込み、局地的な免疫反応を引き起こす恐れがある」(2019.6.6 AFP BBニュース)
この様なデータを考えると、人が一日にどれくらいのマイクロプラを摂取しているのかを単純計算をしてみると…
<一日の摂取量 取りまとめ>
*朝 目覚めの水(ペットボトルの水)500ml 325個(1ℓ)÷2=162個
*昼食 魚(サンマ)定食 1尾 3個(イワシのデータ)
塩 (年間2000個÷365日) 6個
ペットボトルの水 500ml 325個(1ℓ)÷2=162個
*夕食 ムール貝(or牡蠣) 10個 90個×10個=900個
塩 (年間2000個÷365日) 6個
ドイツビール 78個 78個×3本=234個
*呼吸するだけ 365個
*寝しなの水 162個
1日のマイクロプラ摂取量 2,000個
1日2,000個、1週間 14,000個、1か月 60,000個、1年 720,000個という結果になります。
3.プラスチックの性質と懸念される影響
プラスチックという素材は、可塑性を持つもので色々な形に成形が出来るとても便利な合成樹脂です。しかし、生産時に添加される酸化防止剤や難燃剤などの有害な化学物質が含まれている場合があり、親油性の為、海中から汚染物質を吸着し、DDT、PCB(ポリ塩化ビフェニール)と言った毒性の高い物質を集中的に引き寄せる性質もあるとされています。PCBは、生態に対する毒性が高く、脂肪組織に蓄積しやすい。発がん性があり、また皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こす事が分かっている。大阪湾の魚から採取されたマイクロプラからは、発がん性を疑われている物質「ベルフルオロヘキサン酸」が見つかりました。この物質を使った主な用途は、様々ですが特に難燃剤(燃えにくくする)が私たちの身の回りでは多く見受けられます。
ポリプロピレンなど単体の素材としては何も問題はないが、成形するにあたって可塑剤を使う事で問題が引き起こされています。中でも、ポリ塩化ビニル(塩ビ)には、多い時で40%以上もの割合で可塑剤が添加されている。可塑剤は本体である樹脂とは、化学的に結合せず混合されている状態にあるので、温度変化や時間の経過と共に分離してしまいます。要は、海岸に流れ着いたペットボトルは、紫外線劣化などで粉々になります。すると、その場所に可塑剤が溶け出てしまう問題があるのです。ここ最近、ある飲料メーカーのHPで、「ペットボトルは、中味をお手元までお届けし、お召し上がりいただくまでの1回使用を目的として設計されています。また、ペットボトルのPETという素材は熱に弱く、熱消毒ができませんので、衛生面や耐久性の問題から、再利用はお勧めしておりません。」と注意喚起が書いてある。あくまでも、1回きりの使用であり、中に他のものを入れてしまうと、可塑剤が溶け出てしまう事もあるのです。
この可塑剤は、有機フッ素系化合物、フタル酸エステル類、ビスフェノール類などがありますが、内分泌撹乱作用があると言われています。米国の国立環境衛生科学研究所の論文審査のある専門誌の 「Environmental Health Perspectives 」によるとPETが通常の使い方で内分泌攪乱物質を生じる可能性があると示唆した。内分泌攪乱物質とは何か?というと、2003年(平成15年)5月の日本国政府見解では、「内分泌系に影響を及ぼすことにより、生体に障害や有害な影響を引き起こす外因性の化学物質」と定義されている。環境ホルモン物質に関して日本では、1998年に環境庁が公表した環境ホルモン戦略計画SPEED'98で「動物の生体内に取り込まれた場合に、本来その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」と定義しています。
4.海洋のごみ
ここ最近、海岸に漂着する人工芝が多く見受けられます。人工芝は、ポリエチレンとポリプロピレンで出来ています。最近は、耐久性(抜けにくい)に優れる素材としてポリエチレンとゴムの混合素材がでています。これは野島の写真ですが、丸印が全て人工芝です。ここ数年、大量に流れてきているが、どこから流れてきているのかが分からない。調べていきたいと考えています。
プラスチックの問題点、どんなに小さくなっても分解しないことである。内分泌撹乱作用や化学物質過敏症の疑いがあるので今後、調べていきたい。プラ自体は悪い物質ではない、それに対して難燃材や可塑剤を入れて成形しなくてはならない、その成形しているものが融合性されていないので、溶け出てしまう。それによって、悪い影響が出ているのが現状です。
ハワイに漂着物の調査に行った時、ベッタリと漁網だとか土嚢袋みたいなものが岩にへばりついていました。暑さの為、完全にくっついてしまい剥がせません。この様なゴミも出てきているので、海洋のゴミを回収するにも、ゴミが一歩先に行ってしまっている状況です。どうやったら回収できるのか?マイクロプラになる前に、ごみが原型を保っているうちに回収をしなくてはならないのです。
次は、マイクロビーズ・スクラブ剤です。アメリカでは、製造・販売が禁止されています。ただ、この時点で製造されたものは何処へ行ったのか?日本は法的に規制をしていませんので、東南アジアを含めた地域に在庫が来ています。1本の洗顔剤に含まれる数は、33万粒です。子供用の歯磨き粉で、大さじ1杯くらいが入っている。2017年と18年で同一商品を調べましたが、ほぼ同じで量は減っていませんでした。
米国では、2015年の時点で、毎日8兆個のマイクロビーズが海水圏に流れ込んでいたと推定されています(Rochman et al.2015)。 歯を磨く歯磨き粉に入っていますが、うがいをすると下水に流れます。下水処理場のフィルターが0.2ミリですので、当然マイクロビーズは通り抜け海へと流れます。8兆個あったら、8兆個が流れていると考えていいです。EUでは、2012年の時点で最大4,360tのマイクロビーズが使用され(UNEP 2015)、UKだけでも、毎年680tのマイクロビーズが使用されています(Green Alliance)。
台湾は、アジアに先駆けて、マイクロビーズ入りのケア商品の販売を禁止する方針を決めました(NNA ASIA Aug 25 2016)。 2018年には輸入・生産を停止、2020年には販売を停止予定。EU諸国は2014年に化粧品へのマイクロプラの使用を禁止、カナダは2015年にパーソナルケア製品中のマイクロビーズの使用を禁止、オーストラリアも2017年以降で、パーソナルケア商品のマイクロプラの使用を禁止。本来なら、先進国の日本も付随しなくてはならないが、日本はしておりません。最近は、スクラブ剤と明記せずに、「プリエチレン」「ポリエチレン末」「ポリプロピレン」と表記を替えて販売されています。ほとんどが、化粧品全般に混入され、その数800製品以上(大手29社のうち17社の製品に未だに使用)。
多摩川で見つかった小さなスポンジがあります。これは、下水処理時に使われる曝気剤です。調査をしたところ、東京都のある下水処理場より流出したことが判明しました。1つの曝気槽に10万粒入れるのですが、その1割が流出していたが、連絡をして状況を伝えたところ、現在は改善されました。今年6月、西伊豆の海浜掃除でも見つかり、行政に連絡を入れて、対策をして頂いています。今までは、海浜清掃で漂着物を拾ってきたが、減るどころか増えています。「これからはゴミの元を絶って行こう」という事で、10年計画を立て、漂着物がなくなる様に少しずつ変えて行きたいと考えています。
5.身近なゴミ
人が集まるところには、多くのゴミが出てしまいます。以前、仙台で行われたアスリート選手の優勝パレード時に、ゴミは各自で持ち帰るように呼びかけを行い、パレードが終わった後の表通りの路上には、殆どゴミが落ちていなかったと報道がありました。しかし、SNSでは裏通りに溢れたゴミを報告するものがあり、表通りは綺麗であっても、1本路地を入った裏通りでは、ゴミが捨てられていたようです。
昨年の渋谷で行われていたハロウィンの時は、路上にあふれかえっているゴミを実際に目にしました。
昨年開催された神奈川の海岸での花火大会では、終了後、大量なるゴミが投棄されており大きな問題となりました。今年の花火大会は、ゴミ問題等の理由で中止されました。タバコのフィルターが生分解性のものと勘違いをしている人がいます。だから、ポイ捨てが無くならないのであって、煙草のパッケージにも、分解をしないのでポイ捨てはやめましょうと明示した方が良いのではないか。1つひとつを無くして行かなければならない。
6.今後、何をすべきなのか?
リサイクルと言えば、今までは「Reduce(リデュース)ゴミを減らす」、「Reuse(リユース)まだ使えるものを捨てずに、修理するなどして使う」、「Recycle(リサイクル)廃棄したゴミの中から、利用できる資源を再利用する」の『3R』と言われてきました。しかし、この3Rではもう古いのです。現在は、「Refuse(リフューズ)不要なものはいりませんと断る」がとても重要なのです。
コンビニなどで、1度しか使わないレジ袋を貰って捨てる。国内では、年間300億枚ものレジ袋を消費しています。一人当たり250枚の計算になるのです。使い捨て、1度しか使わないものは、貰わないことが大切です。ハワイ州では、ホテルでの発泡スチロール系の皿等を使用することを全面禁止にしました。以前、アラスカ大学の中にあるレストランも全て発泡スチロール系のトレーを使っており、「このままでは、良くないのでは?」と研究所の方々に話をしたのです。日本を含め各国でも、これから追随するのか?そうではないのか?色々とお話をして来ましたが、「さて、あなたならどうする?」という質問を投げかけて、今回は終わりたいと思います。
まとめ
海のごみ問題について、様々な活動を通して語られた坂本さんのお話は、我々人間の生活がどのように環境負荷を与えているのかを考える時間となりました。90分という短い時間では語りつくせぬ濃い内容に、参加者の皆さんは驚きと共にため息…を交えた複雑な心境だったと思われます。
プラスチックという素材、その懸念される影響など、まだ分からない事が多いのが現状なのだと感じます。2019年3月に開催された国連環境総会では、各国が「持続的でないプラスチック製品の使用と廃棄による生態系への被害に取り組む」とし、「2030年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に削減する」と明言しました。世界のプラスチックの年間生産量は3億トン以上に上り、毎日8兆個のプラスチック片が海洋を漂っていると推計されている今、生態系への影響等はまだ不明なことが多いとされています。5月に開催された田島先生のストランディング個体とマイクロプラスチック問題についても、影響評価を推進した研究はまだ行われていないと言われていらっしゃいました。ペットボトルやレジ袋を削減したら、どのような変化があり、どのような影響があるのかは未知数です。
坂本さんは、海浜清掃で流れ着くゴミは減るどころか増加傾向にある、今後はこれらゴミの発生源や原因を絶ちゴミを減らす為に「エメラルドブルーテーブル」という組織を立ち上げられました。まずは1人でも多くの人がこの問題に対し、関心を持ち、行動をすることが第一歩なのかもしれません。
報告:山内 まゆ