JCUE顧問弁護士の上野園美先生をお迎えして JCUE正会員対象に法律に関するオンラインセミナーが開催された。
上野先生はプロダイバーの立場に立った訴訟に多く携わっておられ、事例を交えたお話はプロダイバーにとっては大変興味あるセミナーとなった。
目次
アウトライン
ダイビング事故の現況と私自身が抱えている紛争の内容
法的基礎知識
問題提起
インバウンド
コロナ
最初に上野先生が係わっておられた事案を紹介していただいた。(下記参照)
近年の傾向は今までにはあまり見られなかった、気象の判断ミスやレスキューの方法が争われているケースがあるので、事業者はそれに対してリスクマネージメントをしたほうが良いだろう。
<事案>
「船に上がった後、事故者(60代女性)が体調不良を訴え、病院搬送後、死亡」
「安全停止中のダイバーが浮き上がってしまい、ガイドがすぐに追いかけたが、ゲストは海面でパニックになっていた。その後、意識喪失し、死亡」
「潜降中のダイバーが、「浮上したい」という合図をし、ガイドと一緒に浮上をするが、途中で意識喪失」
「ラダーを使用して海に入ろうとした際に、ラダーに指を挟まれ、指を骨折」
「ゲストがショップに置いていった器材を、ショップが紛失し、傷をつけた。」
「船が高い波を越えた時、船首が上下に動揺し、船首付近に座っていたゲストが腰椎圧迫骨折」
法的基礎知識
刑事裁判と民事裁判の違いをご説明いただいた後、裁判所と事業者の安全管理のずれについてお話を頂いた。
事業者側が裁判の際に「Cカードを持っているダイバーを引率するのであるから、ダイバー自身で安全管理をするべき」と主張されるケースがみられる。
しかし裁判所の一般的な見解は
「水中という不慣れな環境にいるダイバーが生命身体の安全を確保するために、ガイドは、現場で頼ることのできる唯一無二の専門家である。
ガイドは、事前にダイバーの能力や海況などを十分に把握し、これに応じた潜水計画を策定する義務がある。潜水計画に沿った適切な監視体制をとり、異常な事態が発生し、あるいは発生の危険を予見した場合には、直ちに重大な事故の発生を回避するための適切な措置をとる注意義務がガイドにはある」。
ダイバーの経験値は考慮されるだろうが、安全管理義務はガイドにあるという前提で運営をしていくべきである。
参加者からの質問
「コロナの感染のリスクがある場合、ガイドは引率者に対してCPRをしなければならないのか?」
という質問がありました。
感染防止を行う義務はあるとしても損害賠償義務を負うこととは異なる。ガイドがコロナの感染を恐れて救命行動等やるべきことを行わない場合は問題になるかもしない。事前にコロナチェック行いと参加に者に了解を取って、コロナ感染の疑いのあるダイバーをガイドしないなどの対応が必要である。
日本国籍以外の方の事故が発生したら?
まず言語が違うゲストへのブリーフィングは必ずゲストが理解できる言語や方法で行う。
もし事故が発生した場合、原則として裁判は日本が管轄となる。しかし海外で訴訟されてしまう可能性は完全に回避できない。海外から訴訟が届いた場合は慌てて応じず、専門家に相談し対処する。
今回のセミナーはJCUE正会員対象に行われたのでセミナーの内容は詳細には記載できないが、定期的に法律の専門家とリスクマネージメントのあり方についての検討は必要であると感じた。JCUEとして上野先生のご協力を仰ぎながら今後もセミナーを継続していく予定です。
開催概要
日時
2020/12/14(月)
19時30分 セミナー開始
20時30分 質疑応答
21時00分 セミナー終了予定
講師
上野園美
参加資格
JCUE正会員・ショップ会員
参加費
無料
セミナー受講方法
ZOOM利用
定員
20名
講師プロフィール
上野園美 Ueno Sonomi
近年、日本で最も多いと言ってよいほど、ダイビング事故訴訟を多く担当されている弁護士。 自身もダイバーで、より現実を知る立場から、ダイビングを知らない裁判官へ伝えるためにプロダイバー側からできることの問題提起を続けている。
【経歴】
青山学院大学経済学部経済学科卒業
平成7年10月公認会計士2次試験合格
平成12年 10月司法修習終了(53期)
平成17年シリウス総合法律事務所サブパートナー
平成18年12月公認会計士登録
役職
豊島岡女子学園監事
著書
- 事例解説 介護事故における注意義務と責任 (共著・新日本法規)
- 事例解説 保育事故における注意義務と責任 (共著・新日本法規)
- 事例解説 リハビリ事故における注意義務と責任 (共著・新日本法規)
- 交通事故事件処理の実務-Q&Aと事例- (共著・新日本法規)
専門分野
企業会計・監査、労働法、医療過誤、交通事故、民事再生、法務デューデリ