JCUEは、2023年10月に『東京湾干潟で新しい遊び方を探る潜水調査とフィールドワークショップ』を開催いたしました。
2023年のワークショップをふまえて、今年はゲストダイバーをお連れして東京湾アクアライン橋脚下を潜水しました。
開催概要
日時:2024/5/15(水)
主催:NPO JCUE
協力:木更津市金田の浜活性化協議会
参加:JCUE正会員又は、現役のインストラクター.ダイブマスター
参加ダイバー:17名
メニュー:アクアラインの橋脚下ダイビング、すだて観察をダイビングでおこなう、定置網での生物調査
生物レクチャー講師:風呂田利夫先生
5月中は潮干狩りのトップシーズンではありますが、潮干狩り不向きの潮周りの日を選び、チャーター船を出して頂きました。
アクアライン橋脚ダイビング
潮干狩りには不向きですがダイビングには最適な小潮の満潮時に、アクアライン橋脚周辺の生物調査潜水を行いました。アクアラインは、東京側から”海ほたる”まで海底トンネルで、”海ほたる”からは木更津までは42基の橋脚で繋がっています。中央付近の20番21番橋脚周辺を潜りました。
海況は北から南へ向かう潮流が速いため、ダイバーは橋脚北側でエントリーし流されながらポイント近くで潜降開始です。
ポイントの水深は満潮時で5m~6m、透明度は2m~4mです。潮流が速く水底は砂地の為、魚類は橋脚周りに集中して生息しています。橋脚保全のための石積が漁礁の役割や強い潮流の退避場所にもなっています。
橋脚の壁面にはウミウシも観察でき、砂地の水底はウミサボテンやウミエラが生息し、モミジガイが数多く観察できます。
潜水を終了したダイバーのエグジットは潮流の影響を考慮し、船を橋脚から50m程度離れたエリアに係留待機させ、ダイバーは水面を流れながら戻ってきます。
すだて漁法観察
東京湾ならではの漁法”すだて漁法“とは、『東京湾の干満差を利用し、満潮時は水深が2m程度確保できる沖合に、直径20m程の円形の生簀状定置網を設置し、満潮時に誘導網を経て”すだて”網内に入った魚を、干潮時に水深が20cmくらいになったタイミングで捕獲する特殊な漁法』です。
30年程度前まで木更津の漁として行われていたそうですが、現在は観光の為の設置となっています。
すだて網管理者の漁師さんに特別な許可を頂き、内部や周辺の潜水調査も実施しました。
すだてエリアは満潮時でも水深2m程度、周辺の浅場は1m前後の砂地でアマモやコアマモが生息しています。
アマモやコアマモは近年生息エリアが激減しているそうです。
捕獲される生物や魚類は、ホシザメ、アカエイ、クロダイ、スズキ、アジ、コハダ、ガザミなどです。
定置網設置と捕獲生物観察
ダイビング前日に設置した、誘導網の長さが20m程度の定置網を回収すると多種多様な生物が掛かっていました。絶滅危惧種(危機)に評価されているホシザメや、タイワンガザミ、ガザミ、スズキ、コノシロ、クルマエビ、サヨリ、アユ、などが捕獲出来ました。
タイワンガザミとガザミの相違点や、江戸前の寿司ネタのお話など、風呂田先生から興味深い解説がありました。
設置した定置網の捕獲生物回収は干潮時に行いました。周辺の砂地には沢山の江戸前アサリも生息しています。
色や柄がすべて違い、青が特徴的な模様は『木更津ブルー』と呼ばれているそうです。
参加ダイバーの感想
・橋脚下は、流れが早く透明度2m位なので少し緊張しましたが、よく見るとクロダイの姿や、橋脚にも固着生物がたくさん見えてテンションが上がりました。また、ウミウシやミノカサゴなど動きの遅いような生物も見つかり楽しかったです。東京湾と言えば、品川あたりの海のイメージがありましたが、木更津あたりは綺麗ですね。
・生活圏の海域で潜れることが、新鮮でした。アマモ場が減っているということですが、浅瀬に繁茂しているところには生物が集まっており、潜ったままでじっくりと観察することができ、よい経験となりました。
今後の展望
『セミナーや干潟歩きを通じて東京湾を学び、その後に普段は潜れない海域を安全に楽しむ』
というダイビングスタイルの普及は可能か?今後も地元の方々と協働してポイント開発を進めてゆきたい。