本来なら2020年5月20日に池袋のアウルスポット会議室で行われる予定だったセミナーを、コロナ禍による緊急事態宣言発令中の状況下、JCUEとしては初のオンラインセミナーとして実施しました。
スタッフのJCUE事務局メンバーにとっても、初の「Zoom」との出会いであったので、3月18日からセミナー開催までに実に7回のZoomミーティングを行い、Zoomの基本的な使い方やZoomでのセミナーの開催方法などを試行錯誤しながら勉強していきました。
各地で講演、講義を行ってきている講師の中西先生にとっても、初のZoomを使ってのセミナーという事だったので、同じく複数回Zoomでのミーティングを行い、マイクやカメラの準備もして頂き、スタッフ、講師ともども何とか準備を終え当日を迎えました。

以下に開催報告をさせていただきます。

目次

セミナー概略

開催日時

2020/5/4(月) 16:00~17:30 

参加人数

正会員19名
一般会員13名
ショップ会員3名
非会員5名

講師含めて41名にて開催

参加費

JCUE 正会員 無料
JCUE ショップ会員 無料
JCUE 一般会員 無料
学生 無料
非会員 1,000円/1名(JCUE Onlineセミナー第一回開催特別価格)

セミナー講師紹介

中西 敬(なかにし たかし)・・・[自分で潜って確かめる沿岸環境の研究者]
徳島大学 環境防災研究センター 客員教授
近畿大学水産学科 講師(非常勤)
大阪市立大学 講師(非常勤)
大阪ECO動物海洋専門学校 講師(非常勤)
JF兵庫漁連 環境アドバイザー

セミナー報告

本日のテーマに入る前に、中西先生の活動の一部を紹介していただきました。
筆者の私と高校卒業以来37年ぶりの再会となった時の話です。
伊東の海に設置したアミノ酸配合のコンクリートブロックと配合していないコンクリートブロックの海藻の付き方とそこに住む魚の数の比較調査を行いましたが、結果はアミノ酸配合のコンクリートブロックの圧倒的勝利でした。
そんな前振りから本題に入っていきます。

テーマは大きく二つ。一つは磯焼け、二つ目はサンゴの白化。どちらも海を楽しむ我々にとって、その海を後世=未来に残していけるのかどうか、とても気になるテーマです。

そこで、まず中西先生は冒頭に問題提起をします。

現在の我々が、未来に向かって藻場を復活させるには、サンゴの白化を防ぐ(サンゴを再生させる)には、個人レベルとしてできること、国や企業として取り組まなければ為しえないこと・・・そこをこのセミナーを通して参加者の皆さんに考えて気付いてもらいたいとの思いです。

そこで、各々の現象の要因となっている「海水温の上昇」について述べられます。その前段として、地球温暖化がどういった影響を及ぼすのかをWWF(世界自然保護基金)資料から引用してもらいました。

https://www.wwf.or.jp/activities/climate/

上記WWFのHPのURLの「2分でわかる!世界の自然を守るWWFの活動」の動画も参考にして頂くと上の資料がより分かり易くなります。

次に日本周辺の海水温の上昇について気象庁のデータを引用しながら、実際、中西先生と私が一緒に潜った伊東の海の磯焼けの写真です。5年でこんなに変わっています。

気象庁のデータによると、日本近海の海面の年間平均水温が1~2℃近く上昇しており、このたった1~2℃の違いは、海の生き物にとっては4~7℃の体感温度の上昇になるとの解説です。

磯焼けの原因として、そういった海水温の上昇よりも、海藻を食するウニやアイゴが増えすぎたので彼らを駆逐すれば藻場は再生するという安易な考え方ではなく、彼らも「被害者」で、その根本は温暖化による海水温上昇であるというのが次の資料です。

続いて、海藻を増やすための一つの方法として藻場造成の色々な方法を紹介していただきながら、Zoomならではのアンケート機能を使って、参加者に「人工的に藻場を作る場合、あなたは海藻1株に、いくらの費用をかけても良いと考えますか?」という問い掛けも行いました。
中には1本10万円以上かける!という強者の回答もありました。

ここで、磯焼けの話の前段は終了です。

続いて、サンゴ白化のメカニズムの説明です。

通常の水温であれば、サンゴの中に住んでいる褐虫藻が海水中のCO₂、N(窒素)、P(リン)を取り込み光合成を行い、結果O₂を出し、その栄養分(有機化合物)をサンゴが取り込み成長していくというのが、上図、左の絵です。
次に右の絵の説明ですが、異常高温になると、褐虫藻の光合成のメカニズムが崩れ、活性酸素(赤色のO₂=生物にとって毒)が異常に発生してしまい、サンゴにとっては褐虫藻がやっかいな存在になってしまい、結果、サンゴは褐虫藻を吐き出す(または食す)ことにより、サンゴを色付けている褐虫藻がいなくなり白化してしまうというのが、白化のメカニズムです。
これはイソギンチャクにも同様のことが言えます。

では、どうしたら白化を止められるのか・・・中西先生からの問い掛けが続きます。

ここで、中西先生はSDGsの提言を上げますが、「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8.働きがいも経済成長も」させながら、「13.気候変動に具体的な対策を」を打って「14.海の豊かさを守ろう」とするという、そんな都合のいいことを両立させることができるのか疑問視されます。

海を冷やすことができればいいのですが、そんなことはなかなかできないわけで、ただ現実としては台風が少ない年は白化が進み、台風が多く海をかき混ぜることが多い年は海表面の水温が下がり白化が抑えられるという事実を踏まえ、中西先生のような海洋土木屋としては人工構造物により波の攪乱を起こし、海表面を冷やしてサンゴの白化を食い止め成長を促すという取り組みを実験的にしてらっしゃるそうです。

そして、次にサンゴを再生させるためのもう一つのプロジェクトの紹介です。
それは台風の波の力や、ダイバーや海水浴客、船のアンカーなどによって折られたサンゴを助ける方法です。

それは陸上で「ソメイヨシノ」を挿し木で増やしていく方法と同じで、折れたサンゴをアミノ酸(アスパラギン酸)配合のコンクリートブロックに再固着させる方法を沖縄・阿嘉島の座間味村漁協と共同で研究しているとのことです。

すると、再活着し成長する様子が次の画像です。

この「再活着」されたサンゴを「苗」として、自然の海底に設置したり、港湾工事の際に設置される消波ブロック等に事前に穴を開けておいてもらい、その穴にこのブロックをはめ込みサンゴの育成・成長に取り組んでいるとのことです。

中西先生としては、このサンゴ再生活動は、ボランティア活動としてではなく、今後はこのプロジェクトを「仕事」として行っていかないと続かないだろうと危惧しているとのこと。

今後の活動として、環境を産業として回し、教育にも活用し、防災とも共存していきたいというのが中西先生のお考えでした。

地球温暖化と海水温上昇、そして磯焼けの話、サンゴの白化の話と進み、一番初めの「問題提起」に戻ります。

数人に分かれて約10分ほどグループセッションでの話合いを行い、各グループでとても実のある話になったのですが、それを全体で発表する時間は取れませんでした。しかし、その後Zoomでの懇親会となり、そこで中西先生を囲んで時間内にできなかった質疑応答など行い大いに盛り上がりました。

以上で、このセミナーの報告とさせて頂きます。

この報告書を書いている今はZoomもかなり一般的になってますが、当時はJCUEとしての初のZoomセミナーという事で、運営スタッフにも講師の中西先生にもいろいろと準備をお願いし、やっと漕ぎつけた印象の深いセミナーとなりました。

JCUEはその後、今回の反省を活かし2020年内に5回、2021年はすでに2回のオンラインセミナーを行い、今後も続々開催予定です。

https://jcue.net/category/seminar/

また皆さんとオンライン(できればリアルがいいのですが・・)でお会いしたいと思います。
長文の報告、お読みになっていただきありがとうございました。

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