2021年6月22日に開催されたセミナーは、水中探検家の広部俊明氏にご登壇いただき、地球の成り立ちから人類の残した痕跡、そこからつながる探検を写真と動画で解説をして頂きました。
広部さんと言えば、2019年春に、鹿児島県・徳之島で日本最大級の『水中洞窟ウンブギ』を新たに発見し、Newsの特別番組でも取り上げられました。1998年に沖縄県恩納村にある海底鍾乳洞『広部ガマ』を発見したことでも有名です。
水中探検とは何なのか?探検は特別なものではなく、普段わたし達が潜っているポイントでも存在するそうですよ。
<もくじ>
1.地球の成り立ち
2.海と陸の今昔
3.風化しにくい水の中
4.時代による海の変化と…人間
5. そして今探検へ

1.地球の成り立ち

海はいつから出来たのか?
地球の時計を12時間で表現すると、冥王代、始生代、原生代に分けられますが、生物が動き出したのは、顕生代からなのです。生命も海から生まれましたが、海はいつから出来たのか?44億年前にはじめて大気と海洋成分が隕石によってもたらされました。地球が大きくなると衝突の熱でマグマができ、そして岩石に含まれる水分は水蒸気になりました。今ある海の水は、その時のすべて大気だったのです。

海はいつから塩辛いのか?

初期の大気は、100気圧ぐらいあり、成分は水蒸気が多く、二酸化炭素や窒素、塩素など色々な成分がありました。地球が冷えてくると水蒸気は雨へと変わりますが、地表近くへ落ちるとマグマがあるので、すぐ蒸発してしまいます。その間に隕石がぶつかり、また蒸発をするというサイクルを繰り返しました。大気中にある二酸化炭素はマグマに溶けやすく、地球の温室効果が下がってくることにより地球が冷え、雨が蒸発しなくなり水が溜まってきます。
最初の雨は、年間降水量が10mほどの豪雨で1000年ほど続いたといわれています。
雨は、塩素ガスを取り込み濃酸性の雨となり、岩石に含まれるナトリウムと塩素が反応し、塩化ナトリウム(塩)になりました。よって、海は初めから塩辛かったということなのです。

海と陸の今昔

最初の海洋は、二価鉄イオンなどが含まれ酸素はまだわずかでした。酸性だった海が中和され、その水は二酸化炭素を吸い取り、カルシュウムなどと反応し炭酸カルシュウムになり、二酸化炭素を封じ込め沈殿してゆきます。そのようにして二酸化炭素が少なくなり、チッソがメインの今の大気ができました。
最初の海には、陸はほぼありませんでした。玄武岩でできたプレートがずれた時に熱が発生し、玄武岩の一部が圧力と熱と水などで花崗岩になりました。花崗岩は玄武岩より軽いため浮いてきます。これが陸地の誕生となり、この頃から生物が生まれてきました。
38億年前ごろに、バクテリアや古菌類などが出現しましたが酸素はまだほとんどない状態でした。
35億年ごろ最古の化石が発見され、ニュージーランド位の大きさの大陸バールバラ(西オーストラリア、南東アフリカ)があったと言われています。
32億年前、海にシアノバクテリアが誕生し、光合成を始め酸素を放出しました。最初は水中の二価鉄イオンと反応し酸化鉄になり、大陸ウル出現。
そこから8億年は、シアノバクテリアが大繁殖し、酸素を放出し続けついに二価鉄から三価鉄へ鉄鋼層ができた。大気へ初めて酸素が供給され太陽光でオゾン層が形成された。
20億年前から酸素濃度が上がり、水中も鉄イオン濃度が低下し、大気中の酸素も増加した。
10億年前あたりでロディニア大陸が出現し、多細胞動物が出現。8~6億年前は氷河期にあたり、この時は光合成ができず酸素が供給されていなかったのです。
6億年前から氷河期が終わり、酸素が現在のレベルに近づき、海中に酸素が供給され古生代が始まる前に、エディアから生物群が海に現れる。

『あ!探検できるね!!』何故、探検できるかと言うと岩石、今までダイビングをする時、地形や生物を見に行くとき、バールバラのあった位置に岩石が出ている場所があるかもしれない、そのような所を潜り探検をすると生物が生まれる前の大陸のカケラや大陸ヌーナがあったり、ロディニア大陸が分かれて海になったり、ぶつかり沈み海になったりと、そこを潜ることが出来ると思っている。

2.海と陸の今昔

17億4千万年前の先カンブリア時代は、超大陸ヌーナがあったり、11億年前の超大陸ロディニア、5億7千万年前には超大陸パノティアがあったりと、陸が移動しながら、海を形成していった。このような成り立ちを考えながら、海を見つめるととても面白いのです。

酸素濃度に注目し見てみると、酸素濃度が3%くらいの時期が続き、6億5千年前の氷河期が終わったあたりから、シアノバクテリアが出てきたあたりから濃度が上がっています。3億年前の石炭紀は高濃度になり、一度絶滅しジュラ紀のあたりからまた上がり始めています。そこから隕石と衝突し恐竜が絶滅したあたりから下がり、現在に至っています。

生物は、カンブリア紀の主役はアノマロカリス・三葉虫や脊椎動物など全ての門が登場しました。デボン紀には、森が形成され、シーラカンスの肉鰭類、昆虫や両生類が出現します。ジュラ紀には恐竜、そして、66億年前の隕石落下では、恐竜が絶滅しました。メキシコのセノーテは、隕石落下の証拠になっている場所でもあります。古第三期は哺乳類、鳥類、第四紀になりサンゴや人類が誕生したのです。

大陸移動で大西洋ができました。実は、この大西洋が出来た場所を潜って見学できる場所があります。それが、アイスランドなのです。
実際にアイスランドで地球の割れ目と言われている「シルフラ」を潜りました。
水中は、マントルが噴き出すところなので浅くなったり、深くなったり、水温は約3度。ここが地球の始まりの場所です。玄武岩が柱状節理になっており、急激に冷えるとこのような形になると言われています。ユーラシアプレートと北米プレートが出来るところなので、2つのプレートに同時に触れることができます。透明度100mの世界を進んでいきます。地球の割れ目がずっと続き、大西洋になっていく。

3.風化しにくい水の中

ここまでの歴史を見てきて、陸上では風化し、人間に壊されてしまったものが、水中では残っている可能性が高いと気が付きました。それはまだ、人間が存在する前、生物が生まれる前の歴史が、岩石等に残っているのです。

世界中の海で、人が潜ったことのある海は、0.01%もありません。もちろん、映像もないのです。だからそこ、その場所を開拓し、生物や地形など新たなる発見があるはず!世界初の映像がとれる。そんな場所は、海の中だけだと言っても過言ではないのです。

例えば、日本の秩父帯や四万十帯、ジュラ紀や白亜紀の地層が表に出たところ、そんな場所はたくさんあります。沖縄では中生代の石灰岩、最近の更新世の時の石灰岩も地表にでている。
ヒロベガマは更新世200万年前のころの石灰岩、辺戸ドームは中生代、同じ石灰岩でも時代によって、そこに入る時の気分が変わるのも面白いですね。

4.時代による海の変化と…人間

鍾乳石が出来るスピードは、1年に2ミリほど、2メートルの鍾乳石ができるのはおよそ1000年。雨水が少しずつ、石灰石を溶かしそれが鍾乳石になる。できるスピードは、その地の石灰岩の性質によって違いが出てくる。
ヒロベガマの鍾乳石は、水深25mのところにある鍾乳石。鍾乳石は水中ではできないので、ここは昔陸上だった証拠でもあります。測定の結果、1万年前だったことが判明。日本近海は、少なくとも1万年前の海面は、25m以上低かったのです。

2万年前は、日本の海面が120m~150m低かったと言われています。
ヒロベガマの時代、海面が40m低かった時、その頃の日本は、東京湾が埋まっていたり、四国や九州が本州とつながっていたり、慶良間も本島とつながっていたりした。

海面が146m低かった時は、日本列島はほぼつながり、旧石器時代から縄文初期にかけて中国大陸がつながっているため、人が移動できるのです。北からは、ナウマンゾウが南下しました。このような事象を含め、この時代にできた鍾乳洞が今、海底にあるのではないかと考えます。

縄文時代は、水が上がってきました。今、温暖化と言われていますが、6000年前くらいは、海面が6メートルくらい上がっていた時代がありました。
埼玉は海なし県と言われておりますが、その時代は海があったのです。その証拠に、海があったエリアには貝塚が残っています。

旧石器時代や縄文時代、海水が引いた時代にはそこで文化が育まれていました。
東京湾、千葉、初島、平沢や大瀬崎などは陸でした。

5. そして今探検へ

洞窟探検のみならず日本の海には、様々な遺跡と思われるものが沈んでいます。
佐賀県唐津、秀吉が朝鮮出兵時に作った名護屋城があるところです。
ここには七ツ釜があり海底には、様々なものが落ちています。(神功皇后が朝鮮出兵の戦勝祈念の時土器を捨てた場所との伝承があり。)このようなところに潜り、歴史を肌で感じ、実際に見ることができます。水中に会ったおかげで、そのままの形で残っているのです。

また、神奈川県小田原にある石橋。ここも探検ができます。江戸城に関するものが多数見てとれ、水中に四角い石が落ちており、碇石があります。石垣に使う石を切り出し、船で江戸へ運搬をしていたものが海底に沈んでいます。
壱岐や出雲の海には、与那国の海底遺跡に似たようなものがあり、沖縄の北谷にある遺跡では、お墓のようなものが点在しています。

徳之島で見つけた「ウンブギ」では、縄文初期の痕跡を発見しました。約一万年前の土器のカケラや土器が散らばっており、貝塚のようなものも見つかりました。その昔、ここで人類が生活していた痕跡なのです。

今は水面上昇していますが、陸だった時の人々の歴史が水中に隠れているかもしれないのです。そのような場所を探検すると、色々な発見があるかもしれません。このようなことをダイビングのプログラムに取入れても面白いですね。

6.まとめ

地球の成り立ち、そしてその歴史を紐解き学ぶことにより、新たなる水中での視点が広がるということを広部さんは語って下さいました。
埼玉や群馬には、内陸であるにもかかわらず貝塚が発見されています。これも、地球史の地質学的な変動が起きているからと気づかされました。地球温暖化による海面水位の上昇に伴い、また内陸に海ができるのかもしれません。
地球の歴史を学び、水中でその痕跡を見つける潜り方は、生態観察や水中カメラとはまた違った切り口でダイビングを楽しめそうですね。世界の海で撮影された圧巻の映像や未公開映像も交えながら進められたセミナーは、皆さん驚きと共に興味津々で視聴されていました。
広部さんの探検家としての探求心と行動力、ロマンあふれる内容に拍手喝采のセミナーとなりました。

報告:山内まゆ

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