2026年3月13日、JCUEオンラインセミナーが開催され、海洋生物写真家の峯水亮氏を講師に迎え、「ブラックウォーターダイブ(BWD)の概要と変遷」「環境負荷の課題と持続可能性への取り組み」「外洋ドリフトダイビングへの移行」「インディペンデント・ダイビング(自立したダイバー)の提唱」について講演が行われた。

1.ブラックウォーターダイブ(BWD)の概要と変遷

BWDは、夜間に浮遊生物(プランクトン)を観察するナイトダイビングの一種である。

歴史

1990年代初頭に始まり、2013年頃のLEDライトの普及により長時間点灯が可能となった。峯水氏は2015年に世界初のBWDイベントを沖縄で開催し、商標も取得している。

初期のスタイル

当初はビーチやアンカーを打ったボートからライトを設置する「ボンファイア(係留)スタイル」が主流であった。これは、プランクトン生活を終えて沿岸に戻る「接岸回遊」の生物を観察するのに適している。

2. 環境負荷の課題と持続可能性への取り組み

捕食圧

同じ場所で毎晩ライトを使い続けると、本来は寝ているはずの魚がまるで昼間のように行動し、捕食者が定着してしまいます。これは、観察対象である稚魚や幼生が、周囲にいる魚たちに食べられてしまう「本末転倒」な状況が発生する。

光害と競争

大光量ライトによる「明るさ競争」が起きている現状は望ましくありません。それはいわゆる海の中の光害です。環境にも悪影響を与え、生態系バランスを崩している懸念される。

対策

峯水氏は、開催頻度の制限(2ヶ月に1度など)、ポイントの分散、大光量ライトの使用禁止、照射角を絞って生物を追い詰めない等のガイドラインを提唱している。

3. 外洋ドリフトダイビングへの移行

捕食圧を避け、より自然な生態を観察するため、峯水氏は現在、水深数百〜数千メートルの外洋域でのドリフトダイビングを主軸としている。

観察スタイル

ライトは単なるブイの目印としての用途であり、ライトで生物を集めているわけではありません。手元のライトを頼りに真っ暗闇の中を泳ぎまわりながら生物を探します。これにより、国内初となる貴重な魚類の稚魚や、新種クラゲの発見にもつながっている。

4. インディペンデント・ダイビング(自立したダイバー)の提唱

ガイドに依存せず、自身で安全を確保しながら未知の生物を探求する「インディペンデント・ダイビング」の必要性が説かれた。

DATT管理の徹底

以下の4要素を自ら管理することが求められる。

  • D(Depth):決められた深度を守る
  • A(Air):残圧および窒素・酸素濃度を把握する
  • T(Time):潜水時間を厳守する
  • T(Trouble):機材トラブルや水中拘束への備え

推奨装備

外洋での漂流リスクに備え、マーカーブイ、予備ライト、水中ホーン(音響信号)に加え、可能な限りGPS機器やポニーボトル(予備空気源)の携行が推奨される。

5. 海洋環境の現状と写真家の使命

BWDを通じて、深刻なプラスチックゴミ問題も浮き彫りになっています。

現状

本来、稚魚や幼生はクラゲや海藻などの自然にあるものを隠れ家や身を寄せる場所として利用していました。それらはいつか自然に朽ち果てるものですが、近年は海中に人間が出したごみが漂い始め、そういったいわゆるプラごみは、半永久的に朽ち果てることがありません。生分解性のプラスチックですら、何年も海を漂い続ける為、稚魚やタコの子供たちが、そのようなレジ袋やビニールの破片・ペットボトルの蓋、コロナ禍以降で増えたマスクなどの漂流ごみを隠れ家として利用するシーンが目立ってきました。また、本来は生息できない付着生物の基盤にもなってしまっていて、生態系バランスを大きく変化させてしまっている現状が報告されました。

メッセージ

便利さの代償として海に流れ出たゴミが生態バランスに大きな影響を与えているのです。この現実から目を背けず、写真を通じて現状を伝え続ける決意が語られました。

6. 質疑応答のハイライト

生物の同定

世界中の研究機関(アメリカ・スミソニアン博物館など)と連携し、必要に応じて飼育による成魚確認を行うなど、学術的裏付けを重視している。

初心者への対応

スキルに不安がある場合は、まず沿岸のボンファイアスタイルで経験を積み、自立したスキルを身につけてから外洋に挑戦することが望ましい。

2026年開催のブラックウオーターダイブの今後の予定

https://www.blackwaterdive.net/2025/11/2026.html
https://line.me/R/ti/p/@065mlkuk

峯水 亮(みねみず りょう)

水中写真・映像作家。1970年大阪府枚方市生まれ。西伊豆大瀬崎でダイビングガイドとして活躍後、1997年にフリーの写真家として独立。
日本写真家協会会員。静岡県 清水町ふるさと大使の他、OMS JAPAN, Nauticam Japan,Ultralight Camera Solutions社のアンバサダー, Marelux 社のシニアインフルエンサー を務めている。
草創期はダイビングメディアを中心に活動し、国内外の撮影に従事。
数多くの児童向け書籍やTV番組などにも写真及び映像を提供する他、プライベートでは浮遊生物を中心とした海洋生物の撮影にも取り組んできた。
2015年にはBlack Water Dive®を商標登録、さまざまな浮遊生物をフィールド観察イベントを定期的に開催している。
著書に「日本クラゲ大図鑑」平凡社や「Jewels in the night sea - 神秘のプランクトン」ナショナルジオグラフィック社など多数。
2016年 第5回 日経ナショナルジオグラフィック写真賞 グランプリ受賞。
2017年6月、アメリカニューヨークにて個展「The Secret World of Plankton」を開催。この時の作品がBBC ,NBC, ABC, National Geographic 誌など世界の主要メディアにて配信・紹介された。
2019年日本写真協会賞 新人賞を受賞。「クレイジージャーニー」「世界まる見えテレビ特捜部」「世界の果てまでイッテQ」「情熱大陸」など多くのテレビ番組に出演。
現在は自然番組の企画・制作の場でも活躍している。

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