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JCUEが継続的に行っている「ダイビング訴訟から学ぶプロダイバーの法的リスク勉強会」も今回で3回目となりました。ダイビング事業の活発な東伊豆・伊東市で開催されたセミナーのご報告です。

開催日時 2014年6月19日(木) 18:30~20:30
講師 JCUE顧問弁護士 シリウス総合法律事務所 弁護士 上野 園美先生
開催場所 伊東市富戸コミュミティセンター
【住所】 静岡県伊東市富戸む594番地 【電話番号】0557-51-6611
参加人数 19名(会員及び非会員含む)
協力 オーシャナ・静岡県ダイバーズ協議会・伊東市ダイバーズ協議会

講演では最初に、上野先生より『ダイビング事故の現状』が報告されました。 平成24年では58名のダイバーが事故にあい、平成25年では49名の事故者が報告されています。
そのうちの76%は40歳以上という現状に驚かされました。

また、知っているようで曖昧だった『事故が起こってからの法的な流れ』のご説明を頂き、実際の事故事例を挙げながら、判決のポイント(争点)について、ガイド側の主張、検察官の主張、そして裁判所の判断について、具体的に解説を頂きました。

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裁判の争点は、我々プロダイバーが事故に対して『予見が出来たか』、そして『結果を回避する努力・対策をしたか』の2点について常に検討されるということでした。

つまり、我々プロダイバーがお客様と潜る上では『常にトラブルを予見』し、そして『予見しうるトラブルへの対策と回避する努力』を念頭に業務に当たる必要があるということです。

これは当たり前のことのようですが、しかしながら近年の事故では上記に対して『不十分』であったケースもあるとの事でした。

事故が起こった場合の初期対応では、実施して欲しい条件として以下をご提示頂きました。
・人命救助の優先
・事故者家族への連絡のタイミング
・事故者家族との面談(謝罪などの問題)
・保険会社、指導団体との連携
・早期の調査報告書の作成(時間の経過による事故状況の曖昧さ回避のため)

また、中期的な対応としては・・・
・家族対応
・事故状況の説明(憶測や推理は絶対にしない)
・責任の有無、賠償の提示
・弁護士などの介入
・内容証明郵便の到達
・訴状などの到達
とのことでした。

また、われわれプロダイバーはお客様より金銭を頂いている以上、当該法律関係の付随義務として、『安全配慮義務』があるという事もご説明いただきました。
『ガイドの仕事は安全管理ではなく、水中ガイドが役割だ』という意見のプロダイバーの方も多いと思いますが、われわれプロダイバーには、ダイビングに内在する危険を理解し、安全にダイビングが出来る環境を整える義務があるということでした。

先生のお話の中で、とくに気になったのは、近年の事故の問題点として挙げられた、高齢ダイバーの増加による疾病が原因の事故についてのお話です。
疾病が原因で事故に至ったとしても、事故の過程で水を飲んでいると、検案書では『溺水』となるそうです。司法解剖や死亡時画像診断(AI)がされないことも多いそうで、疾病の立証が難しい場合も多いのとの事でした。

上記のことなどから、上野先生は『持病などに対する配慮』として、あくまでも個人的な案としながらも以下の文書を作成してくださいました。

→疾病などによってダイビング中に意識を喪失し、溺水するなどの事故が発生しております。ただし、ダイビングという性質上、ガイドやインストラクターがお客様を常時監視することは不可能であり、お客様の異変に気付かない可能性があります。
また、ダイビング中に疾病が発症しても、海中や海面という環境の特殊性などから、直ちに最善の医療措置を実施することは困難であると考えられます。お客様における持病などの申告は、ガイドによる個別監視を強化するためのものではないことをご理解ください。

上記は、申込用紙や予約時に活用する場所があると、プロダイバーが身を守る一つの手段となるとのことでした。

そして今まで挙げた事柄の大前提として、保険加入についても講演いただきました。
もちろんわれわれがプロダイバーでいる為には賠償責任保険の加入が条件ですが、同時にお客様が他のお客様に怪我をさせたケースを考慮して、お客様が個人賠償保険に加入しているかを確認してみてもよいのではないかとおっしゃっていました。

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後半に行われたグループディスカッションでは活発な意見交換が行われ、各グループから以下のような質問がされ、上野先生からご回答を頂きました。

・ショップがスタッフ教育目的の『安全に対するマニュアル』を持っていた場合、裁判の際に適切な業務を実施していた証拠となるか。
→あった方がよいでしょう。一つの情報として、裁判の材料となります。
→「ダイビング講習」に関しては、各指導団体の「マニュアル」が一つの指針になるが、「ファンダイビング」に関しては、そういったものがないので、今までの法的リスク勉強会や今後の勉強会を通して、ファンダイビングに関しての安全ガイドラインを作ることも目標であるが、それ自体が我々プロダイバーの足か汗になる可能性もあるので、慎重な取り組みが必要でしょう。

・外国人のお客様が事故の当事者となった場合、国外での裁判は我々にとってどのような影響があるのか。
→国外での裁判は、本人が知らない間に判決が出ていたという場合すらある。海外での裁判の場合は、あまり関係してこないと思われる。

・体験ダイビングやOW講習など、『自己責任』の証明でもあるCカードを持たないお客様の事故の場合の我々の過失はどうなるのか。
→この場合のプロダイバー側が問われる過失はかなり大きい。危険性の説明や安全に対する配慮にはよりいっそうのものが必要とされる。

・初期対応として挙げられた『指導団体への連絡』は、なにを意味するのか。
→早期の連絡による、指導団体顧問弁護士などからのアドバイスや、保険対応がスムーズとなる。

・服薬の有無、疾患の有無、既往症の確認、ダイビング当日の血圧の測定などを実施しているが、裁判でどのような効果があるのか。
→ゲストの服薬の有無、疾病の有無、既往症などから、ダイビングのリスクが高いと思われる場合は、「ダイビングができる」という 医師の診断書を提出していただいた方が良い。
重ねてお客様のご家族の承諾書を提出して頂くなどの対策が必要だと考える。
しかしながら医師の診断書や家族の同意書があったとしてもリスクを伴う業務に変わりはないので、そこまでのリスクを抱える必要があるのかも考えて頂きたい。

などの、貴重なご意見を頂きました。

まとめ
 常に事故を予見し、予防する対策を講じる。しかしわれわれの業務ではそれでも事故の起こる可能性をはらんでいるということを、改めて痛感させられる講演でした。
目を瞑りたくなる現状に向き合い、ダイビング事業者とお客様との良質な関係を続けていくためにも、お互いの為の約束事を作るタイミングが来ているのだと思いました。

2014.6.20 ㈱マリンステージ 田副 雄太




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